あさくま再建の第一歩
経営参画でいくか、強烈なリーダーシップでいくか。
もちろん、会社がもっと若くて、前向き志向の店長が多ければ、参画させなければダメだ。前向きの人が多い店長グループに対して、意見も聞かず、店長を尊重しないで、創業者が交代したからといって、新しい親玉が自分勝手に、ガンガン引っ張ると、反発を招く。だから前向きな人が多い店長グループには、しっかりした方向性を与えながらも、こまめに相談して、意見を聞きながら引っ張っていく必要がある。経営に参画させるのが大事なんだ。
ところが、俺が再建に乗り出した時代のあさくまは、そんな状態ではなかった。自分から改革しようという店長はほとんど皆無で、打たれ強いだけで、部品のような店長しか残っていなかった。
そこで俺は、もう自分達で考えさせることははやめにして、現場が何をやるかは俺が決めることにした。俺が決めた通り、現場にやるのが店長だということにしたんだね。で、一番最初に手がけたのが、人件費の節減だった。
当時のあさくまグループでは、売上が対前年比97%と減っているくせに、しかも2800万円も赤字が出ているのに、人件費が前年より6800万円も増えていた。各店の店長が、パートが辞めるたびに現場のシフトをろくにチェックもせずに、スタッフを募集して、補充するものだから、その分の人件費が6800万円も増えていたんだ。
そこで、店長を集めて、この6800万円のコストを減らすためのシフト変更の話をした。前年通りのコストに戻すだけだから、過重労働でも何でもない。ところが、店長たちは抵抗する。忙しくなるとか言ってね。忙しくなるなんて言ったって、利益が毎年毎年、ずっと減っていいのかよと俺は吠えた。机を叩いて怒った。赤字のままじゃあ、店だって、また減らさなくてはならなくなる。忙しくなるどころじゃない。そう説得して、シフトを見直し、6800万円分を削るのに、2年間もかかった。
30店舗で、6800万円ということは1店舗あたり200万円だ。時給1000円で計算すると、年間2000時間減らさないといけない。1日5時間、延べで400日間分の勤務時間を、シフト表から削る必要がある。店のスタッフと、その交渉をしろと、店長に迫った。店長会議で、各店の人件費率を出して、順位づけし、人件費率の高いほうの店長から順番に、「減らせ!」と怒鳴りあげたんだ。
そこまでやっても、店長は現場に帰って、何もやらなかった。次の会議で「お前ら、会社つぶす気か!」と怒鳴っても、その場では、はいはいと言ってるけれども、店に帰れば何もやらない。
結局、強制執行だ。俺らテンポスの幹部スタッフが、すべての店を回ったんだよ。店に行って、シフト表を作って、店長の横に座って、店長からスタッフに「あんたはこうしてくれ」と言わせた。店長が言えなければ、こっちで言う。「あなたは午前中だけ来てくれ」「午後5時半から来てくれ」とか。そこまで強制的にやらなければ、店長は動かなかった。