取り組み姿勢。何が嬉しくて頑張るか

阿佐ヶ谷のビクトリーはサンドイッチのイートイン、テイクアウトの店
駅から3分くらいで、モールの中はいつも賑わっている。
二軒隣にUCCが出来てから、ビクトリーのリード店(売り上げ、利益共)であったが、ここ2~3年は年間100万位の赤字を出し続けている。
年間100万と言う事は赤字になったり黒字になったりで、もうひと頑張りでなんとでもなるレベル。
実験店としては規模といい、赤字額といい、手頃な店舗である。
2年前に5年いた店長が辞めて、学生時代から4年間アルバイトをしていた前田くんに店長をやってもらう事にした。
時給950円の前田君に1万でも良いから3ヶ月連続黒字にしたら30万の月給にしてやると伝えた。
赤字額も大した事でもなかったので、任せっぱなしにして、臨店は月に一回。
その度に実験商品を作ってみろ。サブウェイに行ってみて来い。いろんな事を指示していたが、言いっ放しであった。
前田君は、東京経済大学を出てそのままビクトリーにフルタイムで来ているのだから、アルバイトでなく、就職したと言う意識を持ってるだろうなぁと、コッチの勝手な思い込みで期待した。
420万かけて改装したり、全面禁煙にしてみたりしたものの、黒字にはならなかった。
ゼンショウから900台近く引き上げて来た中古の、ソフトクリームマシンがあるので、150円のソフトクリーム食べ放題をやる事にした。店にいるお客さん、7人に聞いたら150円なんて安すぎるから200円にしたほうが良い。との事
6ヶ月経って夏場12/日 冬場5~6/日 出る。
店の中を見回しても「150円食べ放題」のポップが、レジの横にコッソリと貼ってある。まるで見つからないように貼ってある。
「前田君よ、ポップを6~7枚貼り出せ。」
「お前30万の店長にするといったのはおぼえているだろっ。」
「ここの店で黒字にしてやり方をつかんだら、FC展開をする、阿佐ヶ谷のパン屋の店長をやってるだけでは東京経済大学を出た価値がないじゃないか。」
前田君は「いいですねー、希望が持てますねー」と俺を喜ばせるような事を言う。
更に半年経ったが、黒字になったり赤字になったりで変化はない。
ここふた月は、週一で臨店指導に通ってる。
「前田君!月に8万の赤字なんてどうとでもなるだろうよ!」
気の弱そうな前田君は「はい」と気合は入ってないが、真面目に答えた。
工夫させようとヒントを言っても、殆ど自分からは答えない。
朝出勤する人が200円のコーヒーを20人位がテイクアウトで買ってくれる。
「セブンで100円コーヒーが売れているというから、ビクトリーも、朝だけ、100円にして見るか。」
「それは売れますねー」
「だけど、200円×20人を100円×40人でトントンだよ」
「40人は楽に超えます。」
「じゃあやってみよう」
「前田君よ、俺が提案してお前がそれはいいですね、チィと逆じゃあないかい」
目論見違いで、平均して30~35人が100円コーヒーを買ってくれている。そのままでは忙しいだけで、売り上げダウン!
ささやかに天が見方をしてくれた。100円コーヒーを買ってくれた客の70%20~25人が300円のサンドイッチを買ってくれる。
これだけで5~6万の利益が増えた。
後5~6万の粗利を増やせばわずかながらも黒字定着だ。

前田君と話している間、店内の客は4人しかいない。
店員は前田君を入れると3人になる。
「前田君、赤字の原因は客4人に、店員3人、人件費カットが進んでないんじゃないか。」
「いえ!今日は私は休日なので、タイムカードは、打刻してません」
「お前、自分の取り分を減らして店に来てる訳~」
「平均月に一回の休みで、休日は給料とってません。」
「ちょっと待て!お前の取り分を減らして人件費率を下げろって言ったか!月に15万か20万の給料を減らせって誰が言った!
そんなところの努力でなく、知恵と工夫をして、いろんな事をやってみて黒字にするんだよ。
自分を犠牲にするな。
得てしてこの手の誠実だが工夫の少ない店長は、こういう努力をする。

「前田君、もう一品運動をしよう。お前は気が弱そうで強引な事は全然ない。
バイト、パートを集めて、みんなにお願いをしろ。
社長から3ヶ月黒字にしたら社員にしてくれるって言われてる、2年近く店長をやってるが、今度こそ社員になれそうです。
100円コーヒーにしたら、粗利が5~6万増えた。もう5~6万粗利を増やせば黒字になる。
お願いがあります。もう一品運動をしようと思う、お客様にポテトチップスはいかがですか?何でもいいから、もう一品いかがでしょうかと進めてくれ。と言え。
パート、バイト8人の名前を書いて、模造紙に日々のもう一品の注文数を個人別に書き込め。その上で頑張ってくれたパートには、心の底から「ありがとうもう少しです。」
毎日「ありがとうもう少しです。」といい続けろ。
協力してくれない人には「声かけにくいものねー、無理しなくてもいいよ。」と言え。
200~300円のもう一品が12~13個づつ売れている。
250×12個×70%×30日=63000円の粗利アップになった。

何とかわずかながらも黒字定着だ。
誠実だが工夫の少ない前田君の何とまあ世話の焼ける事。

あさくま、経常利益148%、既存店33ヶ月連続前年比をアップしている。
数字をみれば、立派なもんだ。
実際には、まだまだ途上店舗だ。
私にFBでクレームがあった。
「1ヶ月で二度あさくまの同じ店に行くことがあった。
二度とも、「レア」を頼んだら、中まで火が通っていた。二度とあさくまに行くことはないでしょう。」
厳しいお叱りを頂いた。
我々はチェーン店、誰でも調理できるようにしている。品質管理については、チェックして問題ないようにしている。と責任者は答える。
ここに甘えがあった。
もし、出来上がりにこだわるオーナーの店だったら、品質管理のチェックなどとは言わない。
店員が好い加減な焼き上がりのステーキを出せば激怒して、包丁の背で、細長いコブができるくらいぶん殴る。
暴力社長と言われようが、労働基準局から呼び出しがこようが、そんな事は問題じゃぁない。
客に中途半端なものを食わせる事が許せない。
鬼のような顔をして怒るにちがいない。

あさくまには、責任感の強い料理長と、品質管者がいる。
だが職人技を持ったオーナーの店には及びもつかない。
だけど、そこで甘えておくわけにはいかない。
パート、バイトであれ、プロに仕上げる。
根気良く続けていく。

工夫をし続ける事と、腕を上げる、極めるために努力し続ける。

私にとっては、前田君と、僅か5~6万の粗利を稼ぐトライをするのも、極めるためのに取り組む事も、おんなじで、
「極めるために努力し続けること」