他山の石

渋谷パルコ7F PM6:00 まだ客はまばらだった。
焼肉「トラジ」は我々で、二組目だった。俺は小生を、頼んだ。小さなウォーターグラスにビールが入ってきた。

お冷を入れるグラスだ。いくら田舎者だって、こんなグラスでビールかぁ。

小生を頼んだ。お冷のコップに、ビールが入ってきた。文句を言う筋は無い。
「もう一杯いかがですか」 今度は小生用のビールグラスが来た。

「ちょっと、姉さん、最初はこの小さなコップでビールが来た。今度はこっちだ。

コップのでかさが明らかに違うだろう」 「すいません、グラスが無かったので」
「客がいっぱいでグラスが足りない、なら分かる。6時で、客が2組。グラスが足りない訳無いだろう。
値段を負けろ、といってる訳ではない。「トラジ」が、どう対応するかを、みせてくれ」
1時間して、店を出た。全くそんなことは無かったように、店員は気にもしていないように

「ありがとう、ございましたー」
翻って、我が、あさくま。
この二年、膨らんだ経費を削り、評価制度を変え、メニュウを変え、

赤字の会社が、何とか2億くらいの利益が出るようになった。
「再生したあさくまのステーキを、食いに行こう」妻はあさくまで、食べるのは初めてだ。
「どうだい、味は?」  「うん 旨いよ」

「コーンスープを、のんでみ」  「うん旨いよ」

「うん旨いよ、シカ言わないのかよ」  「うんうまいよ」
俺は、自慢げにコーンスープを、すすった。
何だ この薄く、さらさらした感触は。「ほんとに、うまいかぁ」 「うん旨いよ」
ちょうど其の店に、料理長がいた。
「安井ぃ、このスープは、うすめてんじゃないかぁ」 「はい 薄くなったので、甘みをくわえました」
「なんだと!」 「其のぶん、原価が、下がりました。」

「こんなスープを出して、他の店の店長は、しっているのか!」
「はい」 「ハイって、ほんとに、店長は、しっているのか?」 「はい」 なんてこった。
「てめぇ、このやろう、。客をだまして、銭を稼ごうってのかよ!しかも、店長も知ってるだとぉ、

てめぇらこのやろう、銭を稼ぐってのは、無い知恵ぇ出して、汗かいて、へとへトンなって、

チョビットしか儲からん。それが商売だ。客の目ぇ盗んで、水で薄めて、そんなことぉして許されるのは

雪印だけだぁ、ばかやろう」
俺の教育は何が足りんかったんだろう。
「トラジ」の方が、よっぽどいいじゃないか。

「そんな薄いものは、あさくまの名前で売るな、後、どれくらい残っているんだ」
「3リットルくらいです」
「分かった、3リットル、使い終わったら、後は、元どうりの、濃いのにしろ!」
「3リットル使うんですか」
「まずいか」
「まずいです」
「てめぇこのやろう、そんなとこで、人を、さげすんだような目をして、まるで俺が、ばかじゃねぇか」
日暮れて、道遠し。
こんな風に考えるのが普通で、こういう人と仕事をして、なおかつ、高い目標に挑み続ける。
らくじゃないが、だから、面白い。それにしても、安井のやろうぅ!!
トラジは、客をだましてないもんなぁ、お冷のコップで、小生を、出しだけだものよ。