結局採用しても、大手の、品のよいやわな連中は、ことごとく、2~3週間で、いなくなってしまった。
8ヶ月目に、2号店を出すことにした。
当時は、競合店もなく、やりたい放題 原価ゼロにちかいものを、売っていたんだから、レジ精算も、5~6000円毎日、違うのは当たり前、
へたに、大卒の悪いのが入ってくると、レジが、ぴったり合ってくる、こうなると、おかしい、3~5万抜いてるにちがいない、睨みをつけて、見ていれば2週間しないうちに、馬脚を現し、くび!
人がいなけりゃあ、出店できぬ。
店内にビラを貼れば、其れを見た、日本語も覚束ないのが、雇えと、言ってくる。
ありがたいが、引き上げに行っても、店内にいても、日本語ができなきゃぁ、無理
客の一人が、ビラを見て、
「募集って書いてあるけど、俺良い人を、知ってるよ」
「うれしいなぁ、紹介してよ」
「元気はよいが、頭に問題がある」
「ぱーかい」
「ぱーじゃぁないが、パーと言われたりしている」
「どれくらいぱーなんだい」
「俺とおんなじくらいだ」
何回も買ってくれて、気心も知っている、てき屋の、若い衆だ。
たこ焼きの道具だの、寸胴だのをときどき、買いに来ている、気のいい中くらいの、パーだ。
「いつでも良いから、連れてきてよ」
「目の前にいるよ」
「パーしかいないじゃないかよ」
「パーッてったって、俺のことかよ」
「そうだよ」
「おりゃぁぱーじゃないよ」
「お前このまえ、たこ焼きの道具を買っといて、今川焼き機を持っていって、親方にぶん殴られて、顔を腫らして取り変えに来ていたが、大丈夫だったかよ」
「あんなこたぁ、しょっちゅうだから、なれてるよ、どうってこたぁないよ。」
「其処が、パーの、証拠だよ」
「おりゃぁパーじゃないよ、」
「一丁前に、プライドがあって、なかなかのもんだが、おまえじゃあなぁ」
「俺じゃぁだめかい」
「おまえなぁ、頭ぁ半分丸刈りで、もう一方は、紫の毛を生やして、
てき屋は勤まるか知らんが、リサイクル屋をなめちゃぁいけないよ。
環境ビジネスだぜよ」
「ビジネスって響きがいいなぁ、俺じゃぁだめかい」
「丸刈りか、紫か、方針に一貫性がない」
「これは、ファッションだから、紫に統一する」
「統一したって紫じゃぁだめだ」
「坊主にする」
「第一其の着ているものなんなんだよ、だボシャツ、ステテコ、ぞうりに、金の首飾り、テレビで見るような、べたべたの、てき屋じゃないかよ
体をゆすって歩くナつうの!」
「服装が普通で,毛が生えてきたら,又来い」
「ありがてぃ」
こいつが、15年もして、役員になっちまうんだから、人生は、分からん
それからつうもの、てき屋の友達が、いろいろ面接に来る。
こいつより、上級の奴は、普通の社会で生活してきたのが多いから、話に違和感は、あまりないが、
小指の欠けたのが、面接に来たりすると、不採用にして、張ったおされるんじゃないかと、びびったもんだが、つぎからつぎへと、指欠けが来るようになると、第二間接までならOK,二本欠けてなければOK 基準が明確になってくる。
レジの女が、言い争いをしている、この辺に来る女といえば、
男どすを聞かせたくらいで、引っ込むような、やわじゃぁない
「俺が金を使ったんじゃぁないって言ってるだろうよ」
「レジから金を持ってったのを、あたしゃ
ぁ見ていた、其れも、一回や二回じゃぁない、じゃないか!」
「確かに金は持っていったのは俺だ、人を泥棒呼ばわりしやがって、ヨウク聞け!もって言った金の分は、ちゃんと領収書を、入れてあるだろうがよ」
「領収書があれば、やたら、レジの金、持っていいと言うのかい
呆れたもんだねぇ、あたしゃ断りもなく、レジの金を、持って言っちゃぁ
だめだっつてんだ」
見かねて、俺
「塚ちゃん、何に使ったんだよ」
「人聞きの悪い!、つかったんじゃぁないよ」
「使ったんじゃない?」
「毎日引き上げに行く、3人で行けば、3人分の昼飯がかかる、一人一本ジュースくらいは飲むわさ」
「弁当代とジュース代って訳か」
「おうよ」
塚ちゃん、疑いが晴れて、胸を張って、「おうよ」
レジ女は不服で、むっとしている。
「塚ちゃんよ、自分の飲み食いじゃぁないことは、よくわかった。が
断りもなくレジの金もってっちゃぁ、まずいんじゃぁないの」
「まってくれよ!俺は引き上げの主任だ、舎弟に昼飯も食わさないで、
さしずができるかよ!」
「ちょっと待て、いつから塚ちゃん、引き上げ主任になったんだ」、と、
,とてもいえる 雰囲気じゃぁない
ましてや、指欠けに、舎弟なんてことばを、日常会話に使われたんじゃぁ
俺の覚えてきたルールと違う社会の人と、一緒に仕事の出来る幸せを
感じざるを得ないことになった、とはいうものの、
相変わらず、レジ女がこっちを見て、睨んでいる、あんた!男か、かすか、見ているからね!といってるようにして。
「塚ちゃん、これから、断ってからにしてくんない」
この辺の言い方に、問題が有ったようで、
「泥棒じゃないよ、冗談じゃないよ」というや
食器の棚を、足で蹴り上げた。勢いよくやりすぎて、食器の棚が、将棋倒しのように、ばたばたと倒れ、がっしゃん がっしゃん、がらがら、大騒動になってしまった。
さすがに塚ちゃん、ばつが悪くなって、
「馬鹿にすんじゃねえよ!」捨て台詞を残して、帰っちまった
ああいう人が、一人去り、又一人去って、明日のテンポスができるんだよなぁ
翌日、よく晴れた日、きのう、の出来事もなかったような平穏な一日
早めに店に行った。午後中かけて、店もかたずいた。
駐車場にむかってびっくり、塚ちゃんが、竹箒で、店の前を穿きながら、(まだ、7時半だよ、)
「社長ぅーおはようー 今日は良く晴れたよなぁ、気持ちの良い日だなぁ」
「気持ちの良いのは、お前だけだ」なんて、口が裂けても言えるもんじゃぁない
びっくりして、口ごもってしまった。
「朝一の引き上げ俺が行くから、トラックに、道具はつみこんであるからよ」
普通、あれだけ暴れて、昼日中、悪態ついて帰っていった人が、朝一で、店にいるかぁ
俺は声震わせながら「あぁ、頼むよ」なんて、言って終った。
彼らの世界の筋は通した、これで終わり、親分が許してくれたんだから
昨日のことは、水に流そうね、ねっ
アーぁ、俺は世間しらずだった。
「堀さん,今度の店の店長やってくんない」
「店長?そりゃあまずいや」
「まずいったって、堀さんのほかに、普通の人がいない」
「そりゃぁそのとうり!だけど俺はまずいよ」
「訳でもあるのかい、俺に出来ることなら、力になるぜ、言ってみなよ」
「実は、盛岡で電気工事やをやってた、多い時は、20人くらいいたから、盛岡の正興電機といえば、誰でも知っている。
業界では大手だったが、調子に乗って自社ビル建てた直後、公共工事削減で,元請けの建設やノ倒産のあおりを食らって、連鎖倒産。
親戚縁者から、金を借りまくり、女房の実家を担保に入れて、
懇意にしていた、フィリピン女と、逃げてきた。
仙台に三月、女房の兄貴に見つかって、ぶん殴られた。
倒産は良い、女と逃げるとは、最低の野郎だ、散々、悪態をついて、帰っていった。
半年して、女とも精算して帰るからといって、もう1。年郡山に半年、いよいよ銭がなくなって、女とも分かれ、川口で降り、バスにのったは、どこで降りたか覚えがない。
とぼとぼ歩いていると、駐車場に、流しだ冷蔵庫だを、山盛りにして
臭いといい、汚さといい、しばらく、身を隠すにはぴったりの店があった。
俺は、逃亡の途中だよっ」
「事情は、ヨウク分かった。そこをおして、店長やってくれ、名前を変えたらどうだ。1年でも、半年でも良い。逃亡する時は,幾ばくかの、金も用意してやる」
逃走資金を用意してやる、と言うところが、偉く気に入られて、人肌脱いでやろうと言うことになった。
「堀さん、レジの金だけは、手をつけないで呉れよ」
「引き上げ先のもの、を盗んでも良いか」
「レジさえ手をつけないなら、後は、やりたい放題だ、」
「やりがいのあるしょくばだなぁ」
「堀さん,念書を書いてくんな」
辞令 テンポスC館の店長を命ず
念書 レジの金は、盗みません 堀紘一
以後5年 店長資格
レジの金を盗まない人
3年後、テンポスが、テレビに、しょっちゅう出る頃であって、映るともなくなく映ってしまった堀さん、女房に連れられて、盛岡に帰っていった
祝い金として、女房に100万円てわたしておいた。
律儀に、10年たっても、年賀状が来る。