女房とは会社創業時から一緒にやってきた。出社も退社も一緒。
3日に1回は、蒲田のマルエツで買い物をして、帰るのがスタンダードコースであった。
家に着くと、女房は着替えもそこそこにして、台所に向かった。今日は俺の好きなカレーだ。
肉はスライスでなく、大き目の塊を煮込まないで、焼いたのをぶちこんでくれ。
テーブルに並べて、いただきましょう、おっと、今日は海鮮サラダ付だ。
ルーも、りんごと蜂蜜、ハウスバーモントカレーだ。ちゃんと分かってる。ありがたいもんだ。
だが、待てよ 。「玉葱は冷蔵庫に残っていたが、あれを使ったか?」 「ううん」
「ううん、ってお前、今日買ってきた玉葱を使ったのか」 「うん、ごめん」
「ごめんって、お前、毎日冷蔵庫を見てんだから、玉葱残っていたの知ってんだろうよ。」 「がめん」
「がめんじゃないだろ!」 「ごめん」てなことで、在庫回転やら、不良在庫やら、
愚だ具だと言いながら、気まずい食卓となっておりました。
私は貧しい百姓の育ちですから、食い物の古くなったものを捨てることが、絶対の罪悪であり、
古い順に使わないと、其のうち捨ててしまうことがあるのが許せなかった。
ある日「ゴール」ということを学んだ。貴方はどんな食卓でカレーを食べたいですか?
古い順に使わないからといって、玉葱ひとつで、ぐつぐついって、気まずいテーブルがいいか、
「あっ、好きなバーモントカレーだ!肉も炒めてある、お前の作ったカレーは、抜群だよなぁ」と言って、
ホッペをつつく、「いやぁん」とか言う。
どんな食卓を囲みたいのですか?玉葱が大事か、「いやぁん」が大事か。それが「ゴール」 なんだ。
ここで、ゴールをはっきりさせておかないと、一生玉葱になってしまいますよ。
古い玉葱くらい、貴方がちょいと早起きをして、味噌汁の具にすればすむでしょう。
第一、二人で帰ってきてから、貴方は何をしていましたか、妻が台所でごとごとしている間、
ゆっくり着替えをして、ソファーに寝っころがって、新聞読んで「飯まだぁ」
台所の手伝いしました?玉葱が心配なら、新聞読んでないで、自分で刻めばいいでしょうが!
頭、がーん、それが「ゴール」か!!
以後「いやーぁん」が続いて、40年。
「カレーできたぁ?」 妻は、パソコン。
「いますぐだよ」 「肉はスライスね」 「わかってるよ」
俺のカレーも、まあまあかな。