「ドンブラボー」で大人気。ピザの開発秘話
イタリアの星付きレストランや、国内の有名レストランで修業し独立したのは2012年。「ドンブラボー」では、イタリアンと和食材をベースとした創作料理を提供しており、中でもピザは人気メニューである。一般的に、ピザの王道と言えばナポリピザだが、ナポリピザを名乗るには、生地の材料は、小麦粉、水、酵母、塩の4つのみ等の決まりがある。その点で言えば、「ドンブラボー」のアプローチは全く異なる。
ピザ生地には、全粒粉をしっかりと入れており、水は玉ねぎ水と、ホエー(乳清)を使用している。ホエーはヨーグルトの上澄みの水のところだ。これは、那須高原の酪農家を訪ねた時に、チーズ作りの過程ででたホエーは使い道が無く、大半は捨ててしまうが栄養価は高いと話を聞いた。それなら水を使う代わりにピザ生地に入れてみたらどうかと思ったのが、ホエーを使うきっかけだ。酵母は、長野県にある酪農家が作るヨーグルトを発酵させた天然酵母を使っている。さらに、ナポリピザと一番違う点は、塩の量だ。ピザはコースの最後に提供するため、計算して香りを出し塩は少なくしているのだ。
社会貢献とビジネスの発展の両立を目指す
「クレイジーピザ」
2020年6月にオープンした、「クレイジーピザ」は、1/4サイズのカットピザを1枚330円~650円で楽しめるテイクアウト専門店だ。ただイートイン席も意されており、ピザ以外のアラカルト料理も楽しめる。
「クレイジーピザ」のオープンの狙いは、多店舗展開を視野に入れてのことだ。レストラン形態での展開は、人材の部分で難易度が高い。そのため「ドンブラボー」の良い部分を継承した、テイクアウト専門店の展開を行うことを決意。都内へも出店も視野に入れている。
1枚100円の「キッズピザ」を販売するワケ
「クレイジーピザ」では、夕方4時半~5時半まで「キッズピザ」を販売している。これは店頭で販売しているピザを、15歳以下のお客さまに限り100円で提供するとういものだ。
キッズピザの目的は3つある。1つは、農家が規格外で廃棄してしまう野菜を「クレイジーピザ」が引き取り料理に使用することで、地域のフードロス削減に繋げるため。提供する時は、食材のストーリーを交えながら渡すようにしている。2つ目は、食材本来の美味しさを子供達に知ってもらうため。例えばピーマン等の子供が苦手な食材は、刻んでカレーに混ぜる工夫をしている家庭も多いだろう。しかしピーマンは、包丁の入れ方次第で苦みを出さずに美味しく食べられる食材だ。ピザなら子供達も挑戦しやすい。3つ目は、上質な食材の美味しさを知ってもらうため。知人から最高級のお肉の端材を使ったボロネーゼを譲り受けた時はキッズピザに使用している。これは、純粋に食を楽しんでもらいたいというオーナーシェフの想いが込められている。
緊急事態宣言を機に、キッズピザの提供を夕方1時間から営業時間終日に変更した。「少しでも、皆さんに生活の楽しみに貢献できたら嬉しい」と平氏は話す。
現在は「ドンブラボー」「クレイジーピザ」の運営以外にも、IT企業等と連携した食に関連するSDGsのプロジェクトにも取り組んでいる。また、今後は、一飲食企業として地域のフードロスや貧困格差の是正にも取り組む考えだ。これらの取り組みを通して、「“食”の仕事を通じて、もっと多くの方に喜んでもらいたい」と力強く話してくれた。
記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)
取材協力
オーナーシェフ 平雅一氏
住所:東京都調布市国領町3-6-43
TEL 042-482-7378