出来る店長と出来ない店長の差は、「エネルギー」の差だ

例えば、「メール会員を集めるぞ」と言うと、上位3位くらいまでの店長は、「分かりました。ようござんす。やりましょう」と言って、すぐやり始める。中位の20人くらいは、まあやったり、やらなかったりの店長だ。営業本部がこまめに店を回って叱咤激励すれば、やり始めるし、本部が少しほったらかしにすれば、だんだんやらなくなる。下位の10人は、何を、どう言ったって、やらない。こういう3つの層に、きれいに別れてくる。

全国店長会議では、メール会員募集のトーク集を作って、店長に練習させた。このトーク集を持って帰って、店のスタッフ全員に練習させろと指示して、店に帰すよね。1カ月くらいたって、次の店長会議のときに、下位の10人に、「トーク練習やったか?」と聞くと、みんなが「やりました」と答える。でも、1カ月かかって、メール会員が3人とか5人しか取れていないんだよ。

結局、下位の10人は、成果を出すために動いてるんじゃなくて、申し訳程度に2~3回やって、「やってるんですけど」と報告するんだね。上位の店長も下位の店長も「やってます」という報告だけど、上位の店では200人も300人も、会員が取れている。下位は3人か4人しか取れてない。すべての項目で、同じような数字が出てくる。

もちろん、俺は店長会議で下位のほうの店長を徹底してつるし上げて、「この野郎、もしかして、どこかの会社から派遣されて、あさくまをひっくり返せとか言われてるんじゃないか?」くらいのことを言う。それでも、頑としてやらないやつは、やらないんだね。

それで徐々に分かってきたのは、下位の店長10人のうち4人くらいは、発展途上社員で、現場のスタッフにうまく伝えられない。つまり、間抜けだから、できない。能力も経験も足りない。だけどこいつらは、まだしも見込みがあるよね。

で、残りの6人くらいは、もうエネルギーがほとんどなくて、毎日、店に来て、従来通りのことをやってるのが精一杯という人だ。ただ、打たれ強いから生き残ってるだけ。店長の仕事で、人件費減らすのも、在庫を減らすのも一緒だけど、新しいことをやるためには、テンションを上げないとできない。この人たちは、テンションを上げるだけのエネルギーさえ持っていなかった。

これは、もう店長は無理だよね。客がいっぱい来て改革しなくてもいい店の店長ならよい。毎日同じことをやってればいいから。
当時のあさくまのように倒産寸前で、何とかしなければいけない店で、店長をやるのは無理だ。だから、そういう人たちは1回、店長を外れてもらって、人を入れ替えてやってみるしかない。

俺は、店長から外れてもらった人を、人間として否定しているわけではないんだよ。そういう人が、改革が必要な店の店長をやっているから問題なので、言われたことをやるオペレーターになってもらえば、十分に店の役には立つ。
商売の面白いところであり、きついところは、一度固まったシステムとかオペレーションが、競争会社や市場の変化によって、役に立たない時が来るってことだ。そういうときに、昨日と同じ事しかやらない単に部品でしかない店長は役に立たないんだよ。
こうして5~6年かかって、あさくまは、やれと言ったことを何とかやれる集団に仕上がってきた。そうすると、やっぱり数字も良くなってきたんだよね。売上30億円まで落ち込んでいたあさくまが、何とか利益も7億近く出して、グループの売上で65億円を超えるくらいの規模になってきた。そうなると、次のステップに移行しなければならない。
もう一つ上の売上100億円の企業になるためには、親玉が、今月やる事を細かく決めてるようじゃダメだ。「お前ら、いつまで部品でいるんだ!」と叱咤する段階に入ったんだな。