おとなになっても、不器用な生き方の、加納君!

加納君は、高校3年間.大学5年間一緒。
大学は、寮生活、200人が、壊れそうな、築70年くらいのボロ屋に、寝泊まりをしていた。
マージャンをしている時に、誰ともなく、明日の夕方、鍋パーティーをしようと、全員がと言っても、そこにいた、5~6人で、話が盛り上がり、
加納君と、一級下の、河合が、係りになった。
翌日の夕方四時頃、加納君は、賑やかにやっている、マージャン室に来た。
河合もメンバーになっていて、卓を囲んでいた。
15分か20分か、ややあって、「河合!野菜買いに行こうよ!」
少しくらいなら待つよ、とよゆうのある言い方だった。
更に「河合ぃ!」
「加納さん、ちょっと待って」
加納もマージャン仲間だから、キリの良いところで辞めないと、途中出抜けるわけにはいかないということぐらいはに、良くわかっている。
「河合ぃ!」
しつこい様な感じ!
加納の同級生の奥原が「加納!ちょっと待って、半荘始まったばかりだから」
河合の代わりに言ったものだから、加納も我慢せざるを得ない。
メンバーは、昨日の夕べ程、鍋のテンションが上がっていないのが、居合わせた俺にも分かった。
「河合ぃ!」段々加納も向きになってきた。
「今いくから、ポン!」
「河合ぃ!」
「いー盃口ドラドラ」
デカイ音を起てて、ドアを閉めて、加納は出てっしまった。
翌日加納はメンバーの一人一人に、借りっぱなしになっていた借金を、1200円とか850円とか、返して回って、口を利かなくなってしまった。
高校大学とずッと一緒だった俺だけが、通訳になった。
2~3ヶ月もすると、いつしか、加納君の頑なな気持ちも、氷解して、何事もなかったようになつた。

やがて世間で言う冬休みになり、寮の一室で、話が盛り上がる。
この冬、アルバイトをどうする、と言う話になり。
シクラメンを、リヤカーで、引き売りすると、基本給は、ゼロではあるが、上手くやれば、通常のバイトの二倍は稼げる、加納と岩田が意気投合して、明日の朝二人で行くことになった。
夜ラブレターを書くと、朝読み直して、とてもじゃぁないが、出せない、恥ずかしい、書いた自分が、よくもまあなどと言いつつ、破ってしまった経験がある。
夜は魔物だ。
加納と岩田は、魔物に魅入られた。
寒い朝だった。加納が呼びにきた。
「岩田ぁ、行こうよ!」
「おう」
岩田は、布団から出ようともしない。
「岩田ぁ、」
「おう」
岩田は、布団にくるまって、向こうを向いてしまった。
加納君、頭に来て、岩田の部屋に入って行って、布団をむしり取った。
岩田君、布団にしがみついて、背中を見せたまま。
加納君 やっきりして
「岩田ぁ」
「加納!寒気がするから、今日は辞めて明日にしよう」
向こうを向いたまま、ほざいた。
大人になった加納君、黙って部屋から出て行った。
その晩、晩飯を食べて、何人かが、岩田の部屋に集まって、いろいろしゃべっているうちに、
よしゃあいいのに、岩田が口火を切って(今朝の償いもあった)、明日は、シクラメンいこうよ。
などと言ってしまった。
一部子供が残っている加納は、朝早く岩田の部屋に来た。
「岩田ァ行こうよ!」
「おう 一人で行ってくれや。」
怒った怒った 脱ぎ散らかしてあった靴の、ありったけを、岩田の布団に投げつけて、帰って行った。
早速、借りていた750円を返して、岩田と口を利かなくなった。

20年の余で、二人とも教頭になり、校長になった。
シクラメンの部屋にいた7人で、小鹿7(寮の名前が小鹿)を名乗り、65を超えた今、愚妻と一緒に、年に一度、一泊で、持ちまわり幹事で、旅行をしている。
夫々のつまが、異口同音に、うちの人が変わりもんの訳が解った。
他の6人を見比べて、40年ぶりに、謎が溶けたと喜んでいた。