Smiler 33
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飲食が好きで好きでたまらなくてお店を出しました、と言う話はよく耳にする。そんな理由とは少し違う、むしろ変わった理由から、脱サラをしてワインバルを展開する社長がいる。現在、ワインバル「vivo daily stand」を18展開する、VIVO PRODUCTION TOKYO株式会社の鈴木健太郎社長だ。 同社の役員でもあるフランス料理出身の花本氏の手作りのデリ料理(432円)を、セントラルキッチン機能を持つ中野店から各店舗へ配送。ドリンクのメインであるワインは、赤白それぞれ5種、ビール、サングリア・シェリー・スパークリングで16種類を提供している。 各店舗は約10坪程で、料理はセントラルキッチンから支給することで、仕込みの手間が省けるため、ワンオペレーションを可能にしている。売上も順調で、大森店だと8席で坪月商36・7万円をたたき出す繁盛店となっている。 そんなvivo daily standを運営する鈴木氏の目に映る未来は、世代を超えた地域のコミュニケーションバル創りだ。来店している20~40代のコアな客層が、20年後、40年後に子供を連れて訪れる、そして、そこで新たに客同士のコミュニケーションを形成する。そんな姿を想い描いている。そのため、23区にあるJR、私鉄、地下鉄のおよそ600の駅に1店舗づつ、地域のコミュニケーションの場となるような店を出店していく狙いだ。「飲食業は利益云々よりも、社会的貢献の意味合いが強いんです」と鈴木氏は言い切る。 そもそも、鈴木氏がこのバルを目指し始めたのは、今から20年前。学生時代のバックパッカーで訪れたスペインで見たバールに魅了された。スペインのバールは街中にあって、地域のバールに地元の人が集まるため、コミュニティーが出来上がっている。朝から老人がワインを飲みながらカードゲームをする傍ら、サラリーマンが新聞を読みながらコーヒーをすする、夕方は小学生がお菓子やジュースを飲みにお店に来るのがスペインのバールだ。そんな日常的なコミュニティーの場が、日本でも必要だと強く感じたという。その後、大手CD販売のTSUTAYAに新卒で入社し、3度の転職、最後の広告代理店の入社面接では「飲食店をやるから稼がしてほしい」と言って入社したという。10年のサラリーマン時代も、スペインのバールを見に4度スペインに行き事業計画を練り上げ、2007年に独立。1号店であるvivo daily stand中野店をオープンさせた。 現在は、直営店が10店舗、FC店が8店舗あり、今後は直営店は広げずに、社員教育、マーケティングの実験店として運営していく考えだ。600店舗展開の実現は、FC店舗の拡大を中心に具現化に向かっている。「理想はスペインのバールのように年中無休、全店朝7時~深夜2時までお店をだして地域の人の集まる場にしたいですよね」と話す。しかし、現在の日本人のライフスタイルがこの営業形態に合っているとは言えないし、忙しい人に、さぁどうぞ、コミュニケーションしてください。というのは、現状では難しく、理想とのギャップを感じているという。現実と理想の中で、今できる最大限の取り組みと、挑戦をしているのだ。 冒頭の話しに戻るが、今来ているお客様が将来、子供を連れて店に来店する、そんな未来を実現するために、地域のコミュニケーションバルとして、600店舗を展開するには、今からやらないと間に合わないと、50年後の姿を見据えた想いを熱く語ってくれた。09

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