靴磨き粗利150万/月、いくらの給料が妥当か

テンポスの創業社長、森下篤史の日々、経営で感じることを記事にしていきます。


給料を決めるときは、隠れている要因を考慮する

八重洲口の靴磨きが平均粗利150万/月。いくらの給料が妥当か。店長に質問すると、25~30万という答えが一番多かった。一方で、乗降客の少ない大森駅の靴磨きは、平均粗利が40万だとする。この担当者の給料はいくら払うのが妥当か。もう一度店長に聞くと、八重洲口の給料が20万~30万円とは答えなくなる。

しかし、評価は粗利だけを見るのではなく、その後ろに隠れている要因を考慮しなければならない。そこで、大森の担当と八重洲口の担当を入れ替えてみれば、いくら給料を払うかの参考になる。なぜなら、八重洲口の立地が稼いでいるのであって、本人の努力ではないからだ。大森の担当が怠けていたわけではない。

かつて、あさくまの社長をしていた頃、あさくま鶴見店の店長の評価が高かったのは、鶴見店が全国一の利益をあげていたからだ。当時は稼いでいる店舗の店長は立派だという見解があった。店長は謙虚に「私の力ではありません」とは言うが、他の店に回そうとすると大いに抵抗した。どこかに、この利益を稼いでいるのは自分だという気持ちを持っているからだ。鶴見店の店長に、相模原の店長をやってみろと言ったら、評価はどうなりますか、と聞いてきた。このこ頃から、評価を利益中心にしなくなった。

店長評価は第一段階として、指示したことをやってくれれば良し。だが指示したことを出来る店長は、当時80店舗の店長のうち、5、6人程度だ。第二段階目は指示をする内容を工夫してやれるかどうか。工夫して実行出来るのは4~5人いる。しかし、工夫は出来るが、指示通りではない店長が、4~5人のうち、4人、つまり指示された通りやった上で工夫も出来る店長は1人しかいない。第三段階目は、方針を伝えるだけで指示をくみ取り実行できる人。これは2人いる。このうち1人は俺よりできると思う。

俺は発想は素晴らしいが、穴だらけだもんなぁ。

所得は市場原理の中で決まる(2020.3.5追記)

所得は市場原理に基づいて決められる。価値のある仕事をしているからといって給与の高さに比例するわけではない。
ほとんどのリサイクル屋は、閉店した飲食店から食器を引き取ってこない。だけどテンポスは食器を引き上げて磨いて販売している。普通なら捨てる食器にもう一度命を吹き込む仕事をしているんだから、これはとても価値のある仕事だ。だけど、そんな価値ある仕事でも食器を磨く仕事の時給は800円か900円程度。でも仕事の価値自体は年棒2千万円の人と比べても大差ないよ。だからといって、時給1万円の人が磨いたバカ高い中古食器なんか誰も買わないだろ。だから時給800円。これが市場原理である。努力は認めるが、給料は市場原理で決まるのだから、取り分に対してグチグチ言ってはいけない。会社の中で、自分はこれだけ立派な仕事をしているのだから、給料はもっと欲しいと子供みたいなことも言ってはいけない。もう一度言うが、給与は市場原理で決まる。

一方で、たいした努力もしていないのに給料が高い人がいる。でもそれを羨んではいけない。「あいつはうまくやったよなー」と思うだけで、「いつか俺もああなりたい」と思ってもいけない。コツコツと働いて種をまいて耕した分だけ実になればいいと思っていると、たまに豊作になったりするからさ。だから、豊作を期待しないで、撒いた分だけ実になればいいと思って仕事をすること、これが健全な精神でいられる考え方である。

テンポスバスターズ
森下篤史