ビール愛店主の理想郷

広島の繁華街銀山町に、営業時間たったの2時間、お一人様2杯までの店「ビールスタンド重富」がある。おつまみなし、料理の持ち込みもNG、ただただ、ビールの美味しさを楽しむための専門店だ。オープンは、2012年7月。店内はスタンド式で、丸テーブルが3つあり、10人ほどが入れる広さだ。県内・県外から多くのファンが訪れ、土曜は30人の行列をつくるほどの話題の店である。

運営は株式会社重富酒店。重富氏の祖父の代から続く酒屋で、昭和初期に大阪で初めて飲んだビールの美味しさに感動した先代が、アサヒビール西宮工場のドイツ人技師から生ビールのイロハを学び、民間として初めてビールを注いだことから、ビールと重富酒店の歴史が始まった。

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ビール専門店と言っても扱うビールは基本的にアサヒビールのみ。それを昭和のカランと平成のコックを使い、壱度注ぎ、重富注ぎの4種類の注ぎ方で提供する。それぞれビールの注ぐスピードや、泡の量によって爽快感、濃厚感、クリーミー感といった口当たりや味わいを変化させる。それはビール通ならずとも、一口飲むと明らかに違いが分かる重富氏ならではの究極の技術だ。

夏の仕事帰りにゾクゾクするような爽快感を味わいたいなら壱度注ぎを、もっちりとした泡でビールのほろ苦さを味わいたいなら弐度注ぎと、目の前のお客様に合わせてビールを注ぐ。「ビールは人と人を繋げるコミュニケ―ション。美味しい料理と美味しいビールを飲むことで心が豊かになり、人生を少しずつ良くしていくものです。だから、ビールスタンド重富は、この広島を元気にするビールを提供し、そのノウハウを地域の飲食店に広めていきたいのです」と重富氏は熱く語る。

また、ここでは、生ビールで広島を元気にするプロジェクトとして「流れ川はしご酒」イベントを実施している。これは、ビールスタンド重富がある周辺地域の飲食店を最大5軒ハシゴできるイベントだ。前売券3500円(700円×5枚)で料理とお酒を楽しめる。

さらに、飲食店向けには、「生ビール大学」も開催している。これは、テクニックの話しよりも、ビールを注ぐという心構えを学ぶ場としている。

ビールは段取りが八分、管理・メンテナンス・洗浄さえきちっとしていれば、残りの二分で、今日入ったアルバイトでも美味しいビールが注げるという。しかし、時間がない、手間がかかるという理由から、グラスを冷やし忘れていた、前回ビールサーバーをせんじょうしたか思い出せないなどの飲食店も多いのが現状。そんな飲食店さんに、まずは美味しい一杯のビールを注ぎたいという気持ちを持って頂けるよう、お手伝いしたいと、その生き生きとした笑顔は繁盛を超え、心底ビールを愛してやまないといった印象だ。

ビールスタンド重富
広島県広島市中区銀山町10-12
TEL:082-244-4147

Smiler31号