トップ営業マンの上司が、支配的な高野支店長になったとたん。

愚かな事をしていた時代の体験。
確か、27~8才の頃
三期連続全国一の実績を引っさげて、大抜擢をされて、テック本社に「流通営業部課長」として配属された俺は、組織の、体制の意味を知らず、合理的なだけで会社のためになると、それこそ傍若無人に動き回った。
大事に、組織を動かして、マネジメントしている、役員や部長にすれば、俺は、社長に目をかけられて調子に乗っている小僧であったに違いない。
其れは今になって感じるが、激流の真っ只中で泳いでいた俺にとって、分かるものでもなかった。案の定1年で本社を追い出されて、東京支店の配属になった。
そこには、鳴り物入りでトーメン(?)から、本社に移ってきていたなんとか言う、横柄で態度のでかい奴が、一足先に支店勤務になって、営業課長をやっていた。
半年もするとその課長は、支店長にとりいって保身が上手いだけで、商社の人脈も経験も活かせなく、全くの成績不良課長であることがわかった。
社長が直接採用した事でもあり、その課長には支店長も腫れ物に触るような物言いをしていた。
支店のマネージャー会議でのテーマが、「損益がイマイチの東京支店をどうするか」であった。
その課長は、商社から来ただけあって、実績は上がらないが、物知りで、ああしたら良いこうしたら良いと、仕切って会議をリードするのが常であった。
常々、そいつに対する煮え切らない支店長をみている俺は、「東京支店の損益改善は、こいつを首にするのが一番だ。」となんとか言うその課長を名指しで噛み付いた。
2~3ヶ月でそいつはいなくなった。

支店を分割する事になり、西東京支店を大井町に作り、金子支店長のもと、4人の営業課でスタートすることとなった。
支店長は細かい事を言わない、任せるタイプのマネージャー。
たちまち俺の課は、全国一になった。
一期下の伊藤課長は、実力があるが、上司とは一切争わない、周りを見回しながら仕事をするサラリーマンの出世する典型の様な男で、それでいて、部下の統括はどうにいっていた。
後に、専務にまでなったが、社内抗争に巻き込まれて、退職して専門商社の社長をやっている。
伊藤課長は、「森下さん、森下さん」と、しょっ中そばに来ては、話し込んだりしていた。
俺は悪い気はしない。「伊藤!伊藤」と可愛がった。

支配的な高野支店長に変わったのは、西東京支店の配属になって一年を過ぎた頃であった。
大雑把な俺は、理詰めの高野が苦手で、毎週の営業会議の報告書作りに、意味を感ぜず、実績を残せばいいだろうと言う態度が、高野の気に触ったと見えて、しょっ中やりあっていた。
二ヶ月も過ぎた頃、部下を集めて「これからを高野がいる間は、毎日夏休みにする、明日は房総の白浜にテニスにいくから、テニスシューズを持って来い」
週に1~2回は部下8人で仕事もしないで遊びまわっていた。
秋川に魚釣に行ったり、会津にドライブしたり、
そんな日々を過ごしているうちに、
土日の一泊二日で、小淵沢の「小学荘」と言う校舎を移築した民宿に行く事にした。
聞きつけて伊藤課長も、部下を連れて参加する事になった。
更に会計機課のグループも参加することになったが、高野を連れて行く気にはならなかった。
会計機課長などは、飲んだ挙句、大井町で高野を投げ飛ばして、交番のおまわりが出てきて、部下が、取りなして治まった。
3課長とも、高野抜きで行くのが無性に楽しい事の様に思われた。
俺の課では、金曜日の夜を直帰にすればには、金曜の昼からいけますね~などと、言うやつがいて、それじゃあ金曜は朝から、八ヶ岳高原だ~と盛り上がった。
伊藤課長は、其れを聞きつけて、自分の課も、金曜の朝から行くことにしたという。
そんなのありって会計機課長も、金曜の朝から行く事になった。
じゃアッってんで、俺のチームの馬鹿が、木曜の夜を直行にすれば、木 金 土 日と、豪華旅行になりますよなどと、言い出して「お前は仕事はまるで駄目だが、いい提案をするな~」
即採用、俺のとこは結局木曜の朝礼が終わると、真っしぐら秋の八ヶ岳に向かった。
四人目の真面目で課長の中では年長の板垣さんは、金曜の夕方出発し様としたところ、誰もいない支店で不審に思った高野の尋問に合い来られなくなってしまった。
其の晩は、23人貸切の「小学荘」は、殆どが20代。相撲大会をやったりしているうちに、ズボンの剥がしっこになって、凄まじい騒ぎになった。

その年は俺の課は、前年度全国一であったのが、ビリから二番目になってしまった。
高野はビゼルバと言う会社の専務だったのを、社長が引き抜いてきた男、しょっ中本社に出向いては、支店経営が思わしくない元凶として、森下の、悪行を訴えていた。
幹部は次第に洗脳されて森下はそんな悪いやつだと、植え付けられてしまった。

この事は後に、テックを解雇されてしまう遠因となった。
猪の使い方を誤った高野に合掌。