インディペンデントDAY 【妻からの、独立記念日】

50歳のある日、恐る恐る、「飯くいに誘った時、お前が行かないって言ッたら、俺独りで行くけど良いか?」
「いつも、一人で、行くと言ってる訳じゃぁ無いよ」
「お前が行くといえば、喜んで一緒に行かせてもらう」
「お前と行くのが、いやだといってるわけじゃぁない」
女房が「其れはいいことだ。あたしゃ今まで竹の子とり、其れも人の山。泳ぎに行くといえば、湘南じゃなくて、青梅の冷たい川。虻ばっかりで、アッチこっち腫れてきた。ぶどう狩りだって、鋏を持ってくから、鋏なんかむこうにあるんじゃないのと言っても、持ってったほうが良いと言う。勝沼のはずれの誰も来ない人の畑に子供を連れて、あたしゃ、車で見張りをさせられて・・。」

「やだやだ、もう一人で行くなら、是非、行ってくれ」
そんなことを、思ってたのか、知らんかった。
「映画行こう」といって、断られても、いじけるわけでもなく、おまえと一日 家にいてビデオを見て過ごした。
「何か食いにいこうよ」といって、断られても、「そうだな、やっぱ お前の作ったものが一番だよ」
ん、ん、んまずいんじゃぁない、たまにゃぁ、他所で食うのも良いと思って。
俺は、25年間、やりたいことを、ずーッと我慢してきた。
思い切って、言ったら、一人でやってくれ、だとぉ。我慢の25年は、何なんだったんだ。
活動的な俺が、一日家の中でビデオ。外は日が照っている。

草原で育った俺は、毎晩庭で「うをーん、おをーん」と吠えていた。檻に閉じ込められて鳴いていた。
何で、こんなことになってしっまったか。
べったりタイプと、さっぱりタイプ。
俺は、べったりタイプだから、何をしたいかでは無く、「ふたりでやる」ことに意味がある。
女房が「映画に、行こう」といえば、面白くも無いような「ローズマリーのあかちゃん」にだってついて行く。

「ケーキがあるよ」といえば、お腹一杯でも、昼間今川焼きを食っても、「ケーキか、いいねえ」といって食う。
夜だって、女房がパソコンを遅くまでやっている時なんか、一人で先に寝るわけに行かないので、

口に出掛かり、口に出掛かりした「さきに寝るよ」を何回も飲み込んで、やっとの思いで言う。
「映画行こうよ」 珍しく「いいね」をクリックしてくれた。
映画は「黒兵衛の大将」石原裕次郎と三船敏郎が発電所を作る男らしい映画だ。
「こんなのやだぁ」
映画舘の前で「やだぁ」なんてありかよ、映画行くって言ったじゃないかよ!
「一人で行って」 二人で見るから良いのであって、「一人で行けだとぉ」
静岡オリオン座の前で、引きずるようにして、「黒部の太陽」を観にいった。
大学の寮に240人からいる。「映画行こうよ」 「おう」 「パチンコいこうよ」 「おう」

「みかん盗みに行こうよ」 「おう」
お前みたいに「一人で行って」なんて言う奴は、ほとんどいない、
寮の奥ぅの部屋に一人でいて、夜行灯の油をすすってる河瀬だけだ。「いや」なんて言うやつは。
結婚しない方がいいのかなぁ、他の人がもっとひどかったら、えらいことになるし。それから25年。
俺「ちょっと大きめだけど、今川焼きたべるヵ」「いらない」「いいよ、俺が、2個食うから」

でかい今川焼き2個も食えるかよ。
日曜の朝「飯と味噌汁と野菜炒め作ったけどたべる?」「朝から、野菜炒めぇ、いらない」「いいよ、犬と食うから」

「映画行こうよ」 「何の映画?」「すいません、決めていませんでした」
「外国に旅行しない?」「外国は、飛行機が危ないから、行かない」

去年は3回、先月も、友達とドイツに行った。
ついに怒った。俺も男、独立だぁ。
でも、みんなで旨いものを食った時など、女房にも食わせりゃアよかったかなあ。
べったり人間は独立するのは無理だなぁ。
「ぱど」の社長夫妻は二人ともさっぱり人間なので、二人で映画に行って、

いい席が一つしかない時、女房が一人で真中の席に移った。旦那も不満に思わないし、

女房も不思議とも思わない。

映画を、観やすい席で見ることが大事で、並んでみると、何なのよ、ってことだろうねぇ。
べったり人間に言わせると、「びっくり!!」
働いてない女房がべったりで、旦那がさっぱり だと最悪の組み合わせとなる。
帰宅して、風呂にはいり、ビール飲んで、好きな番組を見たい。

(べったり人間は、好きな番組を優先しない、一緒に見るを、優先する)

べったり女房は待ってましたとばかり、1日の報告をする。

さっぱり親爺にしてみれば、聞きたくも無いような団地の会議の話と、

習いに行ってる学校の生徒の奇行について長々と「やめてくれぇ」「あんたは、ちっとも、きいてくれない」

破局はもうすぐだ。